ともみの部屋

仕事をしながら世界を旅する私の8ヶ月間

バリのデンパサール空港に到着したとき、私は少し急いでいた。【デンパサール・バリ】

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バリのデンパサール空港に到着したとき、私は少し急いでいた。20時に到着すると伝えていたのに、私が荷物のピックアップを済ませて到着ゲートの待ち合わせポイントに着くのは20:45を少し過ぎたくらいになりそうだったからだ。

 

待っているのが、ホストが手配してくれたドライバーだと頭では分かっていても、そしてきっとこんなことは日常茶飯事なのだと思えたとしても、「ひとを待たせるよりも待つほうがよっぽどいい」と事あるごとに微笑みながら言っていた母親を持つ私は、ひとを待たせる度にこんな焦りをいつも抱く。(いつも待たせてんのかい)
 
ピックアップを鬼のように早く済ませて、到着ゲートを足早に目指す。Malindo Airという初めて聞いた航空会社の飛行機は、失礼かもしれないが想像以上にしっかりしていて、清潔で、そしてすべてのシートに英語の映画が観賞できるモニターがついていた。あとから調べてわかったけれど、Malindoはマレーシアの格安航空会社で、ビジネスクラスがあったりサービスがよかったりと、それなりに人気と定評がある会社らしい。
 
だからなのか、旅行慣れした欧米人が機内には多かった。バケーションだろうか。奇しくもゴールデンウィークのまっただ中にクアラルンプールからバリ島行きのチケットを取ったというのに、悲しいかな日本人は誰もいない。機内のトイレは2つで、ビジネスシートも少ない機体だったから、機会があるごとにきょろきょろと周りを見ていたけれど、やっぱり日本人と見られるひとは、私以外にいなかった。隣には、マレーシアのご家族と見られる3人が座っている。子どもはまだ小さいから、お父さんの膝の上だ。私が隣に座ると、ひとなつこい子のようで、「あ〜」と手を伸ばしてくれる。こういうきっかけはうれしい。自然に隣のひとと会話ができる。
 
日本人が見つからないことは、むしろうれしいことだった。このままクタ・レギャンを抜けて、チャングーまで日本語を聞かずに行けたらいい。
 
……なんて考えながら「急がなきゃモード」の私は一心不乱に出口を目指す。そうそう、私は出口に向かっていたんです。
 
「Hey hey hey hey… hey wait!」意識の外で、私に向かう声を聞く。「hey hey hey」は歌番組ですよ、と思う間もなく振り返ると、到着ゲート手前の謎のスペースで、制服を着た男性3〜4名が、なぜか荷物の中身検査的なことをしていた。
 
「いやまじか」と思う。「私?」という気持ちは微塵も顔に出さず、こういうときは最高の笑顔で「Sure」だ、と思って笑う。
 
私の荷物の中身をバラそう。(別に需要はないけれど)
 
***
 
お兄さん 荷物を見せて。何が入っている?
 
私 洋服、タオル、コスメ……何でも。見たい? 
 
お兄さん 開けて?
 
私 いいよ。こっちのリュックも? スーツケースだけでいい?
 
お兄さん スーツケースだけでいい。……これは?
 
私 見ての通り、私の着替え。
 
お兄さん これは?
 
私 私のタオルと下着、靴下。
 
お兄さん これには何が入っている?
 
私 えーっとね……薬とか。あ、それはコンタクト。ワンデーのね。長期旅行だから、期間分持ってるの。多いでしょ。
 
お兄さん これは?
 
私 日焼け止め。バリだからいるでしょ。
 
お兄さん こんなに?(10本くらい持っている)
 
私……日本の日焼け止めが好きなの。怪しい物、入ってないでしょ?
 
お兄さん じゃあこれは?
 
私 ボディオイル。とヘアオイル。とフェイスオイル。オイル好きなの。
 
お兄さん これは何だ。
 
私 これはパックね。顔のパック。旅行中もきれいでいたいでしょ?
 
お兄さん Oh……女性って大変だね。
 
私 私だけじゃないと思うけど。
 
お兄さん おい、これは何だ。(薬の中に混じって入っている小さな黄色い袋を見つけて)
 
私 ……えっとね、日本のスナック。梅干しと呼ばれるものね。
 
お兄さん ?
 
私 だからスナック。私それ好きなの。まだ開けてないけど、食べる? tryしてみる?
 
お兄さん ……いや大丈夫。
 
私 OK。
 
お兄さん これは?
 
私 ドライヤーでしょ、どう見ても。
 
お兄さん これは?
 
私 街歩き用のサンダルね。ルーム用にもういっこ持ってる。
 
お兄さん これは?
 
私 コスメとスキンケア類。
 
お兄さん ……わかった、もういい。
 
私 ありがと。
 
お兄さん (バラ撒かれたスーツケースの中身を見て)これ、閉まる?
 
私 んー……そうだね、手伝ってくれたら、閉まるかも?(笑)
 
お兄さん OK。
 
私 ね、私、荷物ダイエットさせたほうがいいかな?
 
お兄さん ……かもね。
 
私 (笑)。がんばる。
 
(本当に手伝ってもらって閉まった)
 
私 じゃ、行くね。もういい?
 
お兄さん はいよ、気を付けて。
 
***
 
私は急いでいたはずなのだ。でも彼とのやりとりが楽しくなって、ちょっと遊んでしまった。出口へ急ごう。久しぶりに、搭乗ゲートを出たところで「TOMOMI SANO」と自分の名前が掲げられているのを見る。彼のもとに走り寄る。ごめんね遅くなって、と伝える。「全然待っていないよ」と彼氏みたいなことを言う。「Medu」という笑顔の素敵なひとだった。「では行こうか」と彼は言う。ドライバーのいつものセリフだ。「うん行こう、楽しみ」と私もお決まりのフレーズを言う。
 
急いで向かったこの出口は、さてどこにつながっていくんだろう。二カ国目のバリに着いた。