ともみの部屋

仕事をしながら世界を旅する私の8ヶ月間

クアラルンプールのKLCCパークの噴水の前で【クアラルンプール・マレーシア】

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バリに行こうと決めたのは、偶然といえばそうだし、必然といえば必然だった。必然、はちょっとかっこよすぎるかもしれないな。海外を気ままに放浪すると決めた瞬間から、バリのウブドには行きたいと、直感が言っていた。

バリには、一度だけ訪れたことがあった。

たしかあれは大学の卒業旅行で、当時まだ彼氏だった現・旦那と2人で初めて海外旅行をしたときのことだった。3月だったから雨季だった。でもクタ・レギャンの喧騒や、スミニャックのおしゃれな海沿いのバー、ジンバランのシーフード、そしてウブドのライステラスとキンタマーニ(うーんネーミングがねw)の雨上がりの美しさといったら、なかった。

ウブドに行きたいと思ったのは、なんとなくだ。でも、ラオスのルアンパバーンも、言ってしまえばタイのチェンマイも、イメージとしては近い。緑に囲まれた、深い緑色のある、文化的な街。絵があって、踊りがあって、民芸品は色彩にあふれていて、サルが時折ひとのバッグからモノを盗む。いいじゃない。そこで朝ゆっくりと起きて、フルーツを食べて、ストレッチを兼ねたヨガをして、街を歩いてから文章を書く。楽しそうで、ほしいリズムだった。ほしい空間だった。ほしい時間の流れだった。

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緑は、きっと誰もがそうだと思うが、私がとても好きな色だ。深い青や、深い緑、薄かったりかすれていたり、まぁ色味はなんでもいいんだけど、青と緑の交わる場所は、いつも気持ちがきれいになる。持ち物はカラフルな方がいい。気持ちと身なりを明るくして、緑と青の世界に埋もれるのは、きらいじゃない。サンダルとワンピースで一日を過ごして、またワンピースに着替えて一日を終えるのだ。後者のワンピースはパジャマ代わりに、の意だけれど。

この色合が、今私の部屋にあるのは偶然なのか、必然なのかよぅ分からんけれど、いいことだと思った。クアラルンプールの陽子さんの家に初めて訪れた時、リビングに飾ってあった1枚の絵。色合いが好きだったから「素敵ですね」とひとことつぶやいたら、翌朝には私の泊まる予定の部屋に、その絵が掛け替えられていた。以後5夜にわたって、私はその絵と向き合いながらマレーシアの日々を過ごすことになる。

クアラルンプールは、たしかに喧騒と発展の街だった。歩けど歩けどショッピングモールで、H&Mがあればロクシタンがひしめいて、PARKSONと呼ばれる百貨店に、ISETAN、AEON、DiorにVUITTON。ユニクロや無印良品、果てはダイソーまである始末だから、この街は旅のはじまりの街に適しているようでいて、もしかしたら長く旅をするひとの中継地点として、装備補充の街に向くと宣伝しなおした方がいいのではないかとすら思えてくる。

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バリに行こうと決めたのは、昨日の朝だった。あと数十時間でクアラルンプールを離れるのだからと、離れる前に見たかったペトロナスツインタワーの見えるKLCCパークへ向かう。

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ふと見ると、噴水の勢いがいい。今まで旅した中ですごく上品な噴水だなと感じたのは、スペインのアルハンブラ宮殿の中にあるそれだったけれど、あれがたおやかに夫を見つめる白魚の指の妻だとすると、この噴水はまるでおせっかいの過ぎる商店のおばちゃんのようだなとなぜか擬人化して思う。

もうすぐKLCCパークの日が暮れる。KLCCパークは、もともとジャングルだったというマレーシアの街を切り開いたという面影をむしろ全く見せない、ともすれば非常に人工的な印象を与える緑地公園だ。いや、これは別に否定してはいなくて、私はむしろいま好んでここにいるのだからして、この景観と雰囲気は好きだ、と伝えたい。

周囲は建設中の高層ビルになるであろう建物に溢れ、工事の音が噴水の音に混じって聞こえ、大型ショッピングモールの中をひとが行き交い、舗装された道を地元のひとがジョギングしながら通り過ぎていく。

タクシーはひっきりなしに訪れ、ひとを吐き出し、また連れて行き、肌の色の違うひとがもはやこの国ではどこの国のひとなのか判別せず、夕日が落ちそうな時間帯だからして空の色は刻々と変わり、ベビーカーを押すママが声を荒げて旦那に支持し、観光客の女子3名がツインタワーをバックにさっきから諸々のポーズでベストショットを押さえるために苦心している。

一言で言えば、国際色が豊かな喧騒の街、だろう。ここマレーシア・クアラルンプールは。

でも初めてこの街に降り立ったときと違って、今は私はクアラルンプールに一瞬私はこのひとたちの家族なのでは? と錯覚してしまうくらい好きになってしまったひとたちを持った。異国の地において、頼れるひとがいて、頼っていいのよと言ってくれるひとがいて、という環境は、こんなにもこの国を親しく感じさせてしまうのか。

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私は何をしに旅に出たんだろう という問いは、難しい。

気が付いたらショッピングモール・SURIA KLCCの前にひとが集まってきた。噴水はもう10分以上前から止まったままだ。空が暗くなるのを境目に、ここは噴水ショーと夜景の素晴らしい場所に変わるのだろう。 水面に映るのは、灯りの残像と、頭にヒジャブを巻いたカラフルな女性の面影。

赤に黄色に黄緑に水色。きっとどの国にもこんな色たちは溢れているはずなのに、英語にマレー語、中国語にヒンディー語……ほかにも多数の言語が交じるこの国においては、その色の鮮やかさがさらに強調されている気がしてならない。

きれいな街だな、と思う。噴水が、また動き始めた。きっとこれからクアラルンプールのマジックアワーと、そしてそれに続く夜が始まるのだろう。

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